差別表現はなぜ放送された エンタメ化で欠けた「感度」

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構成・上田真由美

 日本テレビは26日、情報番組「スッキリ」でアイヌ民族を傷つける表現があった問題について、アイヌ民族の歴史を振り返りながら同番組内で検証した。この日の検証を見た元放送倫理・番組向上機構BPO)放送倫理検証委員の水島久光・東海大教授(メディア論)は、エンターテインメントに傾いた現在のテレビ事情の抱える問題があらわになったと話す。

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 番組では、30分にわたって制作過程の中でどういう確認がなされたのか、あるいはなされなかったのかについて詳細に説明しており、放送までのプロセスはかなり明らかになりました。

 ただ、肝心なのは、どうして差別表現問題が起きてしまったのかという深い根っこの部分です。番組を対象とした検証ですのでそこまで踏み込むことはできませんが、図らずも、朝のワイドショーというジャンルが抱えた問題、放送というシステムがはらむ問題があらわになりました。

 検証を見て改めて思ったのは、ワイドショーは、エンターテインメントとしてつくられているということです。BPOは報告書で、「放送人としての感度の低さ」を指摘していましたが、これは、エンターテインメント制作者としての感度ではなく、ジャーナリストとしての必要な感度がないという問題です。

 朝の情報番組は番組全体としてバラエティー、エンターテインメントです。今回の検証でも、チーフプロデューサーらは2時間25分の番組放送時間のうち、時事ニュースを扱う前半の部分、つまりジャーナリズム的な部分を主に丁寧にチェックしていたことが明かされました。問題となった差別表現は、その外の「楽しさ」を追求した後半の部分です。

 問題となった差別表現の部分…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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