新型コロナウイルスの影響で寄席が長期休館するなど、落語界も苦境に立たされました。上方落語協会副会長の桂米団治さん(61)は、父で師匠だった桂米朝さんの没後5年を節目にした落語会「米朝まつり」を8月19~30日に開くと決意するなど、コロナ後の米朝一門が進む道を先頭に立って示そうとしています。一門の落語家ら約50人が所属する米朝事務所(大阪市)の社長でもある米団治さんが、「コロナのおかげで見えてきた」こととは?
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――大きな試練です。寄席の入場制限で客数はコロナ前の30~50%に減りました。
落語界に限らず、ほとんどすべての企業経営者は青息吐息じゃないですか。でも、コロナのおかげで見えてきたことが、たくさんあると思うんです。上方落語の定席「天満天神繁昌亭(てんまてんじんはんじょうてい)」(大阪市)は、客席の前後をひとつ飛ばしにした「市松模様」のような座席表で7月1日に再開しました。有料ライブ配信もしています。これまで、ぎっしり満員の寄席に慣れてきたから、はじめは抵抗があったんですけど、いざ開いてみると、これもなかなかいい。お客さんはゆったり落語を聞いておられ、噺家(はなしか)もお客さん一人ひとりの雰囲気が分かるし、ゆったりしゃべれる。
リモート寄席には色物が不可欠
――桂ざこばさん(72)が席亭をつとめる米朝一門の「動楽亭(どうらくてい)」(大阪市)も6月1日から昼席を再開。同月下旬にはリモート寄席もスタートさせました。
無観客の演芸場でやる、自宅で目の前にカメラを置いて発信するなど、いろんな落語家の動画配信パターンを見た結果、少しでもいいからお客さんが入っている状況で、それを遠くの人も一緒に味わっていただくスタイルがいいなと思って「動楽亭リモート寄席」を開いたんです。配信番組の時間は60~65分ぐらい。落語2席とトークショーです。
コロナ禍の中で、実際に自分が動画配信をタブレットで見ていると、サゲ(落ち)までしんぼうできず、寝てしまったり、切ったりしていた。90分の大学の講義のように長時間、聞かされるのは、しんどいことだとよくわかった。だから60分サイズのリモート寄席には可能性があると思います。もう一つ、気づかされました。落語の後に三味線放談などの色物が入ると、自分の目がらんらんと輝きだした。そうや、リモート寄席には色物が絶対に不可欠だと。それでリモート寄席のトークの中で、小唄などの音曲も入れてみました。これも、コロナのおかげ。
――最近はよく「原点回帰」とお…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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