8月9日の「長崎原爆の日」に、長崎市の平和公園で平和祈念式典が開かれる。歴代の長崎市長が被爆地の代表として読み上げてきたのが、市民とともに作られる「長崎平和宣言」だ。
「長崎を最後の被爆地に」という思いを込め、日本政府や核保有国を厳しく批判したこともある。今年は核兵器禁止条約が発効した。参加しようとしない日本政府や核保有国にどう呼びかけるのか注目される。
「新型コロナウイルス感染症が自分の周囲で広がり始めるまで、私たちがその怖さに気づかなかったように、もし核兵器が使われてしまうまで、人類がその脅威に気づかなかったとしたら、取り返しのつかないことになってしまいます」
昨年の平和祈念式典では、田上富久市長が感染が拡大する新型コロナウイルスを引きながら、核兵器の恐ろしさを訴えた。核の脅威は縁遠いものではなく、すべての人が当事者だという思いが込められていた。
平和宣言は、市長や被爆者、学者らが起草委員会をつくり、例年5~7月に議論して練り上げていく。今年のメンバーには20代の大学生や地元企業の社長も加わった。もう一つの被爆地の広島市では、2010年まで市長が学者らの意見を個人的に聞いて宣言をつくってきたのに対し、「長崎方式」と呼ばれている。
宣言には、その年の被爆地の願いや問題意識が詰まっている。07年には、当時の久間章生防衛相が原爆投下を「しょうがない」と発言したことに「誤った認識」が広がっていると批判した。東京電力福島第1原発事故が起きた11年には「原子力にかわる再生可能エネルギーの開発を」と訴えた。
今年1月、核兵器の開発や保有などを全面的に禁じる核兵器禁止条約が発効した。長崎や広島の被爆者の悲願といえる条約だが、日本政府は参加していない。条約を批准しなくても「オブザーバー」として議論に加わることもできるが、政府は消極的な姿勢だ。
今年の宣言は、世界で唯一の戦争被爆国として核兵器禁止条約に加わるよう政府に求める。そして、この条約を世界のルールに育てようと呼びかける予定だ。
今年の平和祈念式典は、新型コロナ対策のため昨年に続いて規模が縮小されるが、ネット(https://www.youtube.com/channel/UC07CRa3uXbLvjHAZIgoahlQ)で中継を見ることができる。(米田悠一郎)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル