東京電力福島第一原発事故をめぐり、市民による検察審査会の議決で強制起訴された東電の旧経営陣3人が18日、控訴審で再び無罪となった。検察の不起訴判断を覆して起訴する仕組みだが、裁判では無罪が相次いでいる。導入から約14年を迎える制度の功罪とは――。
強制起訴制度は、司法に市民感覚を反映させようと、裁判員裁判とともに2009年に始まった。検察が不起訴とした事件について、検察審査会の市民11人のうち8人以上が「起訴すべきだ」という議決を2回出せば強制起訴となる。
ただ、これまで強制起訴された10件14人のうち有罪が確定したのは、徳島県石井町の元町長の暴行事件など2件だけ。兵庫県明石市の歩道橋事故、JR宝塚線脱線事故、政治資金規正法違反罪に問われた小沢一郎衆院議員の事件など、社会的な関心が高い大事故や政治案件は無罪や免訴(裁判打ち切り)になった。
「ダブルスタンダード」批判
検察は確実に有罪を見込める事件に絞って起訴する。一方、検審は「公開の法廷で白黒をつける」ことを重視しがちだとして、起訴基準が「ダブルスタンダード」だとの批判がある。
検審に審査を申し立てられた人は、弁明の機会がないまま強制起訴され、いったん強制起訴されると刑事被告人という負担の大きな立場に長期間おかれる問題も指摘される。JR宝塚線事故で強制起訴されたJR西日本の歴代3社長は、最高裁で無罪が確定するまで約7年かかり、今回の東電旧経営陣は強制起訴から既に約7年経っている。
日本弁護士連合会は16年、審査が申し立てられた人に意見陳述の場や弁護人を依頼する権利を保障するなど、「防御権」を高める制度改正を求める意見書を公表したが、見直しは進んでいない。
重要証言も明らかに
一方、今回は公開の裁判が開…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル