福岡市や新潟県燕市で先月以降、市街地にイノシシが現れて大捕物になる例が続いたことを受け、「野生生物と社会」学会は16日、自治体職員や警察官が軽装で対応するのは極めて危険だ、などとする声明を発表した。大型のイノシシは体重100キロを超え、ナイフのような犬歯もあり、太ももを刺されて大量出血すると命の危険があると懸念。対応する際は防具などを着けるよう求めている。
環境省の2017年度末の調べでは、イノシシは全国に約88万頭いる。狩猟や有害捕獲で毎年約60万頭前後を捕獲しているが、メスのイノシシは毎年5頭近く子どもを産むため、なかなか減っていない。近年は人里に現れる例が増え、農業や生活環境への被害が深刻化している。
9月2日に燕市に現れた例では、逃げ回るイノシシを市の職員や警察官らが捕まえようとする「攻防戦」が大きく報道された。
学会は、こうした対応の際、半袖だったり、防護具を着けていなかったりする軽装な人がいたのを懸念。犬歯で刺されたり、指をかまれたりするほか、感染症の恐れもあるとして、「このような対応はもはや限界に達していると考えるべきだ」と指摘。下半身を守る防刃用具や盾などの装備、手袋や長袖の衣類を必ず着用するよう求めた。
学会長の鈴木正嗣・岐阜大教授は「まずは安全最優先とはいえ、このまま警察官らを危険にさらし続けることはできない。市街地での獣害対策専門部署の整備などを早急に検討するべきだ」と呼びかける。
声明は学会のホームページ(http://www.wildlife-humansociety.org/topix/inosisi202009.html)から読める。
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル