「藤丸さん」の愛称で親しまれた北海道帯広市の百貨店「藤丸」が31日、営業最終日を迎え、惜しまれながら120年余りの歴史に幕を下ろした。北海道東部で唯一残る日本百貨店協会加盟店だった。近年の売り上げ低迷にコロナ禍が追い打ちをかけ、単独での事業継続を断念。地元企業で立ち上げた受け皿会社が、屋号を引き継ぎ、復活をめざす。
正面玄関前には10時の開店時間前から、100人を超す人が並んだ。扉が開くと客たちは目当ての売り場へと一目散に進む。あちこちに「50%OFF」「60%OFF」の札がかかった。商品を買った人には感謝の気持ちを込め先着千人に1合瓶の清酒が配られた。
「小さい頃、食堂のお子様ランチやおもちゃ売り場が楽しみだった」。帯広市出身で約150キロ離れた北見市から来た主婦(65)は、8階建てのビル内を何度も往復しながら写真を撮った。「食器など結婚道具を買いそろえたのも藤丸さん。その食器を40年経った今でも使っている。いい物を売っていたんだなと改めて思った。閉店は本当に悲しいです」
藤丸好きが高じて「フジマラー」を自称する帯広市の主婦、みっちーさん(54)はこのところ毎日のように来店した。「品ぞろえの多さや確かさ、催事の醍醐(だいご)味――。百貨店が地域にもたらす役割はスーパーとはまた違うもの。藤丸を失って、そのことを初めて痛感するのかもしれませんね」としみじみと話した。
午後7時、1階エレベーターホールで閉店セレモニーが始まった。藤本長章社長が「長い間ご愛顧いただき心から感謝申し上げます。新藤丸にもご愛顧つなげていっていただけるよう、お力を頂戴したい」とあいさつ。午後7時40分ごろ、多くの社員たちが頭を下げるなか、シャッターが下ろされた。拍手が鳴り響き、「ありがとう」のかけ声が飛んだ。
同店は1900(明治33)…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル