帰ってきた明治期の木造客車 町のシンボル、半世紀ぶり

 明治時代に造られ、高知県内の鉄道で使われた後は佐川町内で町民に親しまれていた木造の客車1両が8日、JR四国から同町に無償譲渡された。国内に残る四輪の木造2等客車としては唯一とみられるという。半世紀余りぶりの里帰りで、町は一般公開して観光資源として活用する。

 客車は「ロ481号」で長さ約8メートル、幅約2・5メートル、定員24人。JR四国によると、1906(明治39)年に製造され、今のグリーン車に相当する2等客車として須崎―日下(日高村)間で使われ、30年に廃車となった。

 33年に当時の国鉄が佐川町に寄贈し、役場近くに配置された。幕末や維新関連の資料を集めた隣接する青山文庫の図書を車内で閲覧できるなど町民に愛されたという。町出身の幕末の志士で宮内大臣を務めた田中光顕の尽力によるとされる。

 老朽化で68年に国鉄に返還され、解体して多度津工場(香川県多度津町)へ。鉄道開業100周年事業の一つとして工場職員が修復を手がけ、74年に完成した。

 78年には、地方の歴史的文化価値を伝える資料として国鉄の「準鉄道記念物」に指定された。その後は多度津工場で展示されていたが、佐川町が再三返還を働きかけ、実現した。

 客車は6日にJR四国の多度津工場を出発し、車輪が付いたままの状態で陸送、8日に佐川町で搬入作業があった。重さが約7・4トンあり、トレーラーから収容施設の引き込みレールまで下ろす作業が慎重に行われた。

 2台のカメラで撮影しながら作業を見守った町内に住む田中一郎さん(74)は子どもの頃、客車内に入った記憶があるという。「昔にタイムスリップしたみたいでわくわくしている。お帰りなさいという感じ」とうれしそうだった。

 収容施設は旧青山文庫の隣に新設中で、4月上旬にオープン予定。入場無料で客車の中も見学できるという。(清野貴幸)


Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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