そこに立ったとき、岡真裕美さん(42)の頭の中に、あだち充さんの人気漫画「タッチ」の一場面が浮かんでいた。
子どもをかばって車にはねられ、亡くなった和也の姿をみて、双子の兄・達也は霊安室で言う。
「きれいな顔してるだろ。ウソみたいだろ。死んでるんだぜ」
岡さんが霊安室でみた顔は、漫画みたいに穏やかだった。
あの日から、もう10年になる。
大阪府茨木市。夫の隆司さんは、午後2時、日課のジョギングに出かけた。
2時間後には、長男を水泳教室に連れていく。
「それまでに帰るから」
そんな声を聞きながら、岡さんは睡魔に襲われていた。
日は傾いた。まだ夫はいない。携帯は自宅に起きっぱなし。電話の音が部屋で鳴っていた。
すっぽかす性格ではない。おかしい。
血圧が高めだった夫。どこかで倒れた?
不安に駆られ、消防署に電話した。
「177センチ80キロ、30代。そんな男性が運ばれていませんか?」
電話の窓口から、慌てふためく状況が伝わってきた。
「ちょっと待ってください」。何度も転送された。
何かが起きている。嫌な何か。
警察署から電話、2人の子どもに告げた言葉
そして突然、告げられた…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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