人は消え、時が止まったかのような感覚。見えるのは屋根から崩れ落ちた瓦や、ガラス戸が割れたままの商店。鉄格子のバリケードを越えて路地の奥へ進むと、空気が変わったような気がする。
福島県沿岸部を中心とした7市町村には、原発事故で放射線量が高いため、立ち入りが厳しく制限される帰還困難区域が広がる。その面積は東京23区の半分余りの約340平方キロメートル。ほとんどで今も解除の見通しが立たない。
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- 記者が歩く 東日本大震災10年
- 東日本大震災から間もなく10年。13日夜にも余震とされる最大震度6強の揺れが襲った。復興に向けた人々の歩みは、前に進んだのか。被災地を記者が歩き、考えました。
取材の許可を得て区域内に入ると、荒涼とした空間にぽつんと取り残されたようで不安になる。私(33)が福島に赴任して1年半近くたつが、その間に解除されたのは昨春に再開したJR常磐線の駅などごく一部だ。「どうせもう戻れない」という声も聞く。
そんな中で、いつも気になる場所があった。神社だ。周囲は荒れているところが多いのに、境内の草が刈られ、手入れが行き届いている。何より、人の気配がする。
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「さて、行こうか」
1月中旬のある日。福島市の住宅街で、黒い羽織に深緑色のはかま姿の井瀬信彦さん(90)に促され、私は車に乗り込んだ。後継ぎの次男の信宏さん(58)がハンドルを握る。
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井瀬さんは同県浪江町で840年続く津島稲荷神社の17代宮司。神社と自宅は原発から30キロほど離れた山間地にある。だが、事故時に放出された放射性物質が多く降り注ぎ、いまも避難指示が出されている。
井瀬さんを知ったのは昨年10月。避難指示が解除された町の中心部周辺にある神社で、しめ縄を作っていた。聞くと、受け持つ17社のうち、帰還困難区域にも七つの神社がある。主な3社を中心に月2回、掃除などのために通う。人が住んでいないのになぜ? 同行をお願いした。
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故郷に帰れないままの「お別れ」
「この先帰還困難区域(高線量区間含む)」
「No Entry!」
内陸の福島市と沿岸を結ぶ国道…
2種類
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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