古都ぶら
京都三大漬物の一つ、しば漬けは、京都・大原が発祥の地とされる。樽(たる)だしの新漬けも味わえるこの時期、大原には爽やかな香りが広がっていた。あの紫色を生む葉の香りだ。
京都市街からバスに揺られて北へ、山あいの道を行く。車窓から見える山里の風景にほっとする。
バスを降り、「大原女(め)の小径(こみち)」と呼ばれる参道を通って記者が訪れたのは、漬物店「志(し)ば久(きゅう)」。名物のしば漬けは随筆家、大村しげさんもひいきだった。
しば漬け作りを見せてもらった。ベテラン従業員が一枚一枚、茎から摘んでいたのは、赤シソの葉。しば漬けの紫色は、この葉と関係している。摘むたび、爽やかな香りが広がった。
「葉の軸が入ると食感が悪くなる。昔ながらの手作業を守っています」と店主の久保勝さん(79)。
しば漬けの基本材料は、赤シソ、薄く切ったナス、そして塩。志ば久ではミョウガも入れ香りを高める。樽に入れて乳酸菌の力で発酵させると紫色になる。2週間ほどで出す新漬けは新鮮な食感を、秋以降に出したものは熟成した味わいを、楽しめる。
冬は雪も積もる大原の地に伝わってきた夏野菜の保存食の知恵がしば漬け。香りと酸味が食欲を刺激する。
「ごはんにのせて食べてもおいしいし、地元では細かく刻んでしょうゆを少しかけ、かつお節やちりめんじゃこを好みで添えて食べます」と久保さんが教えてくれた。
しば漬けを命名したのは
「小径」を西へ進み、寂光院を訪ねた。平家が滅亡した後、平清盛の娘、建礼門院徳子が残りの生涯を過ごした寺だ。
記者がここへ来たのは、平家…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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