世界遺産の寺院、平等院(京都府宇治市)は12日、鳳凰(ほうおう)堂の創建時のものとされる平安時代の木製中央扉に、菩薩(ぼさつ)が描かれた絵を確認したと発表した。堂内の扉絵や壁画は国宝で、江戸時代に交換された現在の中央扉もその一部になっており、今回の扉絵も国宝級だと専門家は評価する。
扉は2枚一組の観音開きで、1枚は縦約4・7メートル、横約1・6メートル。鳳凰堂東側の正面中央にあったが、1670年に交換され、保管されてきた、という記録が平等院に残る。
調査は、朝日新聞文化財団の助成で平等院や東京文化財研究所によって行われた。肉眼では分からないが、斜めから光を当てた特殊な写真によって、描線を示すわずかな凹凸が、建物内部側から見つかった。
詳しく調べると、建物内部からみて左扉(北扉)の中央付近で、飛来する菩薩が複数見つかった。三角屋根の建物や柱の跡も判別できた。南扉は激しく破損しているが、建物や山が確認できた。
蛍光X線分析の結果、鉛を含む白い顔料で下塗りをして、さらに白い顔料や緑青とみられる顔料で色づけしていたことも分かった。創建時の作画の解明につながるという。
平等院は、阿弥陀如来と菩薩が死者を迎えに来る様子を描く「来迎図(らいこうず)」とみている。鳳凰堂の扉や壁には、生前の行いなどに応じて9ランクに分かれた「九品(くほん)来迎図」(国宝)が描かれているためだ。
専門家「国宝に匹敵」
加須屋(かすや)誠・元奈良女子大教授(美術史)は「扉絵は創建当初かつ国内最古の(最上位の来迎図である)上品上生図(じょうぼんじょうしょうず)と考えられ、国宝に匹敵する。もっと調べれば阿弥陀如来が見つかるかもしれない」と指摘する。
絵の確認につながった調査時の写真や来迎図のイメージ図は平等院内の博物館「鳳翔館」で公開されている。(小西良昭、高井里佳子)
頼通も眺めた? 「一部だけでもすごい」
平安時代後期、関白を務めた藤原頼通(よりみち)(992~1074)が、この世に極楽浄土を再現しようとつくったのが平等院鳳凰堂だ。極彩色で荘厳された堂内で頼通も眺めたに違いない「来迎図」とみられる扉絵の発見に、専門家も驚きを隠さない。
「正直、この板には何も残って…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル