年齢を重ね、女性の体は変化する。更年期や伴侶の死などを経験し、気持ちも大きく動く。どんな服を着ればいいのか分からない、おしゃれをする気力もない……。スタイリストの石田純子さん(64)が、2011年に出した『大人の着こなしバイブル』(主婦の友社)はそんな女性たちの心をわしづかみにした。
発売直後から反響を呼び、累計10万部を超えた。以後、執筆・監修した本は20冊超。女性たちの「おしゃれの伴走者」であり続けている。
小学校時代から、家で洋裁をする母親を見て育った。20歳で文化出版局に入社、ファッション誌「装苑(そうえん)」の編集部に。コシノジュンコさんや山本耀司さんらにも直接会って、多くを学んだ。25歳の時に独立。雑誌のファッションページを請け負い、モデルや女優のスタイリングも手がけた。
30代のころ、息子の保育園のママ友を見てショックを受けた。入学式などではびしっと決めるのに、送り迎えや運動会の時などはなんだかちぐはぐ。「今はカジュアルなおしゃれが普通だけど、当時は『よそゆき』と『家着』の間がなかった。一般の女性のおしゃれを底上げしないと、と思った」
その後NHKで、夫婦を変身させる番組に出演。それを見た百貨店からの依頼で、パーソナルスタイリングを始めた。相談に乗った顧客は1千人以上。もっと気軽に足を運んでもらいたいと、4年前、都内にセレクトショップ「DUE deux(ドゥーエ・ドゥ)」をオープンした。
体形をカバーして美しく見せる服、1点加えるだけで格上げできる小物など、自ら買いつけたものが並ぶ。価格は数千円から2万円台が主流だ。店で2カ月に1回程度開く「着こなしセミナー」はすぐに予約で埋まる。
神奈川県の江指(えさし)育子さん(75)は8年前に夫を突然亡くし、明るい方に気持ちが向かない時、石田さんにスタイリングしてもらう機会を得た。薦められたのはオレンジ色の服。「気分がふわっと軽くなるようで。殻が破れ、自分らしく生きようと思えました」
繰り返し伝えているのは、全体のバランスを見ること、そして、自分は赤は似合わない、などの「マイルール」を捨てること。伝え方も「ふわっとした感覚的な言葉ではなく、論理的でわかりやすく」を心がける。
強く薦めることはしない。でも、石田さんに薦められたものを体にあてただけでも表情がぱっと明るくなる客が多い。「『変えよう』というほんの少しの勇気」を支えるのが役割だと思っている。「おしゃれって、その人の生き方や価値観を反映する。だから、年を重ねてからのおしゃれは楽しいんです」(佐藤陽)
――伊勢丹(現・三越伊勢丹)…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル