年間210万人超が訪れる名古屋港水族館(名古屋市港区)が、新型コロナウイルスのため半年余り中止していたベルーガ(シロイルカ)などが登場する人気イベントを再開し始めた。だが入館者が増えれば、「3密」の懸念も高まるだけに全面再開は難しく、試行錯誤が続く。
10月31日から再開・拡充させたのはベルーガによる公開トレーニングなど8種のイベント。ケープペンギンの散歩を間近で見られる「よちよちウォーク」は1日1回で「復活」した。飼育員の小串輝さん(53)は「ペンギンは当初、すぐに走り出すなど落ち着きがありませんでしたが、今はスムーズに歩いてくれます」。
名港水族館は、新型コロナのため5月24日まで約3カ月休館した。休館明けから国内最大級を誇るプールでのイルカのパフォーマンスとシャチの公開トレーニングは再開したものの、2500人の収容人数を半分程度に減らした。
事前予約制による入館制限は9月から解き、入館者数は9~10月こそ前年の6割にまで戻ったが、4~10月は前年比63%減。餌代だけで年間8千万円以上もかかるだけに、集客対策は急務だ。
一方で名港水族館のイベントの大半は屋内で開かれるため、「3密」を避ける工夫が必要だ。
餌を追いかけるマイワシの大群で大きな渦をつくる「トルネード」。黒潮大水槽で披露する5分ほどの催しで、9月半ばから平日のみ3回、試行していたが、今はコロナ禍以前と同様、休日も6回見られる。昨年なら約200人が観覧できたが、今は約80人に制限している。間隔を保ってもらう目安として、床に80~130センチごとにテープを貼った。また、イルカとシャチのイベントと同じ時間にして、入館者が集中しないようにした。
ベルーガの公開トレーニングは観覧場所が狭いため平日のみ1回だけ。ウミガメへの餌やりなども観覧場所が狭いため、休日の開催は見送った。シネマ館は休止したままだ。妻と5歳の子どもを連れて平日に訪れた名古屋市名東区の会社員男性(35)は「見られるショーが増えて良かったが、回数をもう少し増やして欲しい」。
名港水族館の担当者は「たくさんの人に来て欲しいが、人が集まり過ぎるのは避けないといけない。休日の開催を見送らざるを得ないイベントもあり、対策は本当に難しい。全面再開はまだ先になりそうだ」と話している。(臼井昭仁)
【名古屋港水族館で開催中のイベント】
○5月下旬から実施
・イルカのパフォーマンスとシャチの公開トレーニング 屋外スタジアム、席は半分に縮小
○9月15日、10月31日に再開・拡充
・マイワシのトルネード
平日3回に加え、休日は6回に。人数制限あり。イルカのパフォーマンスと重なる時間も
○10月31日から再開
・ベルーガの公開トレーニング
平日1回のみ。※昨年は平日3回で休日も
・飼育係がアザラシに餌やりと解説
平日と休日の各1回
・ペンギンの散歩(よちよちウォーク)
平日と休日の各1回
・黒潮大水槽での魚への餌やりと解説
平日と休日の各1回
・サンゴ礁大水槽でダイバーが撮影と解説
平日のみ1回
・ウミガメへの餌やりと解説
平日のみ1回
・ペンギンへの餌やりと解説
平日のみ2回
●休止中
・ベルーガの解説、シネマ館など
拡大する名古屋港水族館が再開した人気イベント、ベルーガの公開トレーニング。観覧場所が狭いため平日のみ1回の開催となっている=2020年11月4日午前11時10分、名古屋市港区、臼井昭仁撮影
拡大するケープペンギンが散歩する「よちよちウォーク」。間近で見られるとあって人気が高い=2020年11月4日午後2時4分、名古屋市港区の名古屋港水族館、臼井昭仁撮影
拡大するケープペンギンが散歩する「よちよちウォーク」。間近で見られるとあって人気が高い=2020年11月4日午後2時4分、名古屋市港区の名古屋港水族館、臼井昭仁撮影
拡大する名古屋港水族館が再開した人気イベント、ベルーガの公開トレーニング。観覧場所が狭いため平日のみ1回の開催となっている=2020年11月4日午前11時14分、名古屋市港区、臼井昭仁撮影
拡大する名古屋港水族館が再開した人気イベント、ベルーガの公開トレーニング。観覧場所が狭いため平日のみ1回の開催となっている=2020年11月4日午前11時9分、名古屋市港区、臼井昭仁撮影
拡大する「マイワシのトルネード」が見られる黒潮大水槽から少し離れた場所に貼られた表示。観覧希望者が多かった場合、ここで待機してもらう=2020年11月4日午前10時25分、名古屋市港区の名古屋港水族館、臼井昭仁撮影
拡大する音楽が流れる中、餌を求めて泳ぐマイワシの大群が渦をつくる「トルネード」。休日も催すようになったが人数を制限している=2020年11月4日午後1時3分、名古屋市港区の名古屋港水族館、臼井昭仁撮影
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル