幸せのバブルリング世代交代 亡きシロイルカ・ケーリャの子2頭継承

 島根県浜田市の水族館「県立しまね海洋館アクアス」で7日、シロイルカのパフォーマンスが約1カ月ぶりに再開した。シロイルカのオス「ケーリャ」が死んでから休止していた。水中で泡の輪をつくる「バブルリング」で人気を博したケーリャに代わって主役になったのは2頭の子どもたち。華麗な演技でさっそく観客を魅了した。

 午前10時半、初回のパフォーマンスが始まった。プールにケーリャの息子のシーリャ(13歳)、娘のミーリャ(8歳)が姿を現した。シーリャが「幸せのバブルリング」を10回連続で出すのに成功すると、観客席から大きな拍手がわき起こった。

 初回のパフォーマンスには、近くの「こくふ子ども園」など約100人の子どもたちが招待された。ミーリャが、自ら出したマジックリングの中をくぐる「ミラクルリング」を決めた。見ていた男児(5)は「最後のリングがすごく大きかった」と興奮していた。

 出雲市の会社員田中育子さん(44)は雨で行くか迷ったが、再開初日を見逃すことはできないと午後3時半からのパフォーマンスに訪れた。大学生のころから親子のパフォーマンスを見てきた。「親子3頭のパフォーマンスの方が迫力はあったけど、お父さんが死んでがんばって練習をしてきたことが伝わった。見られてよかった」と話した。

 観客席には飼育員の水野美華さん(31)の姿もあった。この日仕事は休みだったが、2頭が心配で訪れた。ケーリャと向き合い、死んだ後は2頭の訓練にかかわってきた。

 訓練中、2頭の大好きないたずらを抑えるのに苦労したという水野さん。親子3頭でバブルリングを披露し、観客を楽しませてきた日々が忘れられない。「真ん中にケーリャがいないというのは私のなかではまだ信じられない。でも子どもたちで(パフォーマンスが)できてよかった」

 ただ2頭でパフォーマンスができるまでの道のりは、決して平坦(へいたん)ではなかった。

 ケーリャが死んだ後、パフォーマンスプールのゲートを開けても2頭は入ってこなかった時期もあった。パフォーマンスはプールのデッキにいる飼育員と水中のダイバーとの連携が不可欠。アクアスは、かみ合わなければ別のシロイルカとの組み合わせも考えていたという。

 2頭の練習は6月16日に始まった。ミーリャは繁殖期の4~5月にパフォーマンスを休んでいたため、演技を思い出させるのに苦労した。ストレスがたまってしまうのか、下ばかりを見てバブルリングを一度も出さない日もあった。そんなときは兄のシーリャが寄り添っていたという。それでも地道に訓練を続けた成果は出た。パフォーマンスの完成度は日増しに高まり、今月7日の再開が決まった。

 館長の湊直樹さんは初回の演技をみて2頭の成長を感じた。「息ぴったりに音楽に合わせて泳ぎ、逆さになってリングを出したのは初めてのこと。これからもきょうだいでショーを続けていきたい」と話した。

 パフォーマンスは平日1日4回、土日祝1日6回。問い合わせはアクアス(0855・28・3900)へ。(高田純一)

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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