この夏、石川県の古民家で、戦前に発売された当初の商品と見られる接着剤「セメダインC」が見つかり、セメダイン社(東京都品川区)に寄贈された。ネットで話題になると、同時期に売られていた「セメダインB」を保存していたという人からも商品が届いた。いずれも同社には現物が残っていなかった「幻のセメダイン」。同社は28日、ツイッターの公式アカウントで「なんというネットミラクル……」と喜びの声をあげた。
今年8月。能登半島にある古民家を購入した男性は、片付けに追われていた。
30年以上も人が住んでいなかった空き家だ。昭和の頃の大量の古新聞や雑誌が詰まった仏間の押し入れに、蚊取り線香の赤い紙箱があった。
箱を開けてみると、接着剤の「セメダインC」と、その説明書が入っていた。
説明書で使われている漢字は「新發賣」「セメダインC號」のように旧字体だった。文章も、漢字とカタカナで「接着セントスル品物ノ両面ニ手早ク塗ツテ接合シマスト……」などと記されている。
チューブには、指で押してへこんだようなあとがそのまま固まっていた。
「貴重なものだ」
そう直感した男性は、ツイッターでセメダイン社の公式アカウントに「何年くらい前のものでしょうか」と尋ねた。
公式アカウントの答えは、発売当初の1938(昭和13)年の商品とみられるというものだった。「セメダインにも史料残ってません……!」と驚く反応だった。
戦前のセメダインCを見つけたのは、東京都の会社員、佐藤正樹さん(39)。9月上旬、同社に「セメダインC」を寄贈した。
「世の中では断捨離が流行しているが、誰かにとって価値のあるものは残していきたい」と思ったという。
色めき立つセメダイン社
セメダイン社は、歴史的な発見に色めき立った。同社によると、「セメダインC」はニトロセルロースを主成分にした日本初の合成接着剤だった。
戦前の商品が見つかったことは、今月16日にネットメディアで報じられた。そうすると、今度はそのニュースを見た男性から、さらにうれしい情報が寄せられた。
社内でも「幻」と言われてきた「セメダインB」の存在確認だった。
同社は28日、公式アカウント…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル