五輪汚職事件は19日、大会組織委員会の元理事が異例とも言える4回目の逮捕となった。運営側としてスポンサー獲得に関わった広告会社では、業界3位の「ADKホールディングス」の社長らの逮捕に発展。「賄賂」の送金先には元理事の「第3の財布」が加わり、立件されたルートは一気に五つに広がった。
ADK関係者「少しでも参画したいと思っていた」
トップの突然の逮捕を受け、ADKは対応に追われた。出先から急きょ会社に戻った社員は「影響を最小限にしないといけない」と不安を口にした。
ADKは1999年に旭通信社と第一企画が合併してできたアサツーディ・ケイが前身。2018年に米投資ファンドが完全子会社化して株式上場をやめ、19年に今の持ち株会社の体制へ移った。
広告業界では、ガリバー的存在の電通、博報堂DYホールディングス(HD)に次ぐ3位だが、「近年はインターネット広告が強い他社に追い上げられ、ADKの存在感は下がっている」(業界関係者)という。
関係者によると、そんな立ち位置のADKは13年7月、東京五輪の大会組織委理事になる前の高橋治之容疑者(78)が経営するコンサルタント会社「コモンズ」と、スポーツ事業に関する契約を結んだ。コンサル料は月50万円で、契約は21年まで8年間続いた。
特捜部はコンサル料について、理事に就任した14年以降は五輪の趣旨が含まれると判断。収賄罪の公訴時効(5年)内の約2700万円を賄賂と認定した。
コンサル契約の担当は、元理事と親しかった元五輪担当本部長の多田俊明容疑者(60)だったが、支出には社長の決裁印まで必要だったという。76年入社の植野伸一容疑者(68)は、常務執行役員などを経て13年3月に社長に就いていた。
ADK関係者が「スポーツビジネスで最大のイベント。少しでも参画したいと思っていた」という東京五輪。組織委はスポンサー獲得業務を電通に委託したが、電通は一部業務を「販売協力代理店」として他の広告会社に再委託できた。
植野社長らは協力店になれるよう高橋元理事に頼み、元理事は駐車場大手「パーク24」のスポンサー契約業務をADKに回したとされる。ADKは18年12月、パーク24の分として電通経由で組織委から受領した約4千万円の委託料のうち、約2千万円を元理事側に渡し、特捜部はこれも賄賂と認定した。
一連の事件では、博報堂DYHD傘下の「大広」も役員が逮捕された。広告会社にとって五輪の「うまみ」は何だったのか。
別の広告会社の幹部は「国家…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル