東京・多摩地区にある府中武蔵台浄水所(府中市)の水道水で少なくとも2005年度から、環境への高い残留性や健康への影響が指摘される有機フッ素化合物が検出されていたことがわかった。朝日新聞の情報開示請求を受けて東京都が開示した。都はこれまで、11年度以降の水質検査結果しか残っていないとしていた。
都が新たに開示したのは、05~10年度に多摩地区にある11カ所の浄水所で行った水質検査の結果。19、20年に朝日新聞が請求した際には開示されなかったが、昨年末に改めて請求したところ、都は「(該当する記録は存在しないとした)当時の判断は誤りだった」としてデータの存在を認めた。
開示された資料によると、03年に多摩川から、代表的な有機フッ素化合物のPFOS(ピーフォス、ペルフルオロオクタンスルホン酸)とPFOA(ピーフォア、ペルフルオロオクタン酸)が検出されたことを受けて、都水道局は水質検査を始めたという。
このうち、もっとも濃度が高かった府中武蔵台浄水所では05年度に5回、06~10年度は各12回の検査を実施。各年度の最大値は、水道水1リットルあたり両物質合計で70~105ナノグラム(ナノは10億分の1)だった。すでに公表している11~18年度は80~150ナノグラムの間で推移していた。
厚生労働省が昨年設けた飲み水の暫定目標値は、1リットルあたり両物質合計で50ナノグラム。1日2リットルを70年飲んでも健康に影響はない値とされる。同浄水所では、19年6月に地下水源からの取水を止めるまで少なくとも15年間、水道水は現在の目標値を超えるレベルだったことになる。
同浄水所の地下水源の濃度は、05~10年度に最大値が279~514ナノグラム。発生源について都の担当者は取材に「わからない」としている。
両物質は日用品の防水加工や空港、基地の泡消火剤の薬剤に使われていた。健康への影響について世界保健機関(WHO)は評価を定めていないが、米国ではPFOAが腎臓がんなどのリスクを高めるという疫学調査の結果もある。体内に取り込まれると半減するまでに数年かかり、現在は両物質とも製造や使用が規制されている。
今回の開示について、都水道局は「10年度までのデータは測定の方法や回数が統一されておらず、採水計画に基づいて検出したものはないため公表してこなかった。だが、参考値でも都民に提供すべきだと考えを改めた」と説明した。
また、水道局は26日、05~20年度までに測定した、2千件を超える検査結果をホームページに掲載した。(諸永裕司)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル