建設現場でアスベスト(石綿)を吸って健康被害を負った神奈川県の元作業員と遺族が建材メーカーに賠償を求めた訴訟で、差し戻し審の判決が31日、東京高裁(渡部勇次裁判長、谷口園恵裁判長代読)であった。判決は、13人の元作業員やその遺族に計約1億368万円を支払うよう、建材メーカー4社に命じた。
賠償が命じられたのは太平洋セメント(東京)、ニチアス(同)、エム・エム・ケイ(同)、エーアンドエーマテリアル(神奈川)。他2社への請求は、今回の訴訟の原告が従事した建設現場で建材が使われたことが証拠上、推認できないと判断し、棄却した。
最高裁が2021年、メーカーが警告表示を怠った違法性を認める判断を示し、原告ごとの個別事情を審理するよう高裁に差し戻していた。
同様に最高裁で賠償責任が認められた国は、基金の創設などにより、提訴した被害者以外の救済も進めているが、メーカー各社は原則、裁判で責任が確定した被害者のみに対応している。弁護団の田渕大輔弁護士は「時間稼ぎのために訴訟を続けるのは許されない段階だ。各社は判決を重く受け止め、全体での和解や救済に向け、大きな一歩を踏み出してほしい」と訴えた。
賠償が認められた古野正行さん(78)は判決後の会見で「こんなに長くかかるとは思っていなかった。この間にほとんどの方が亡くなった」と振り返った。(田中恭太)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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