旧優生保護法(1948~96年、旧法)の下で不妊手術を強いられたとして、近畿地方に住む知的障害や聴覚障害のある3人が、国に計5500万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が22日、大阪高裁であった。太田晃詳(てるよし)裁判長は、請求を棄却した一審・大阪地裁判決を変更し、国に計2750万円の賠償を命じた。一連の訴訟で国の賠償責任を認めたのは初めて。
太田裁判長は、旧法による人権侵害が強度だったことなどに照らし、20年を過ぎると損害賠償を求める権利が消える除斥期間の適用について「そのまま認めることは著しく正義・公平の理念に反する」とし、適用を制限すべきだとする判断を示した。旧法を巡り、全国9地裁・支部に起こされた同種訴訟に影響する可能性がある。
高裁判決は、旧法の規定について、特定の障害や疾患がある人を一律に「不良」と断定するもので、子を産み育てる自己決定権を保障した憲法13条や、法の下の平等を定めた憲法14条に反すると判断した。
さらに原告らが社会的な差別や偏見の下、相談機会や情報へのアクセスが難しく、長期にわたって提訴できなかったと指摘。同種訴訟の提起を知ってから6カ月以内に提訴しており、損害賠償を求める権利は消えていないと結論づけた。
後藤茂之・厚生労働相は記者団に「大変厳しい判決であると受け止めております。今後の対応については判決の内容を精査して関係省庁と協議した上で適切に対応してまいりたいと思います」と述べた。(米田優人)
除斥期間 法律上の権利を行使しないままでいると、自動的にその権利が消えるとされる期間。不法行為をめぐる損害賠償の請求権は、行為の時から20年を経過したときに消えると解釈されてきた。時効期間とは異なり、当事者の事情に関係なく進み、中断することはないとされる。
判決要旨
旧優生保護法を巡り、除斥期間の適用を制限し、国に損害賠償を命じた22日の大阪高裁判決の要旨は次の通り。
【旧法の違憲性】…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル