山形県天童市で18、19日に行われた第78期将棋名人戦七番勝負(朝日新聞社、毎日新聞社主催、大和証券グループ協賛)の第2局で、豊島将之名人(30)が158手で挑戦者の渡辺明三冠(36)を下し、1勝1敗のタイとした。激しく追い上げられながらも、角を縦横無尽に働かせた豊島の指し回しが光った。
拡大する第2局の感想戦に臨む豊島将之名人(右)と渡辺明三冠=2020年6月19日午後10時16分、山形県天童市の天童ホテル、迫和義撮影
2人の対局は千日手局を含め今回で31局目だが、昨年3月の竜王戦ランキング戦1組で対戦した時以来2回目と数少ない相懸かりの戦型となった。先手の渡辺が誘導したのだが、早い段階で力戦になり「予定ではなかった」と言う。中盤の桂交換後はじっくりした展開で、互いに長考を繰り返し、駒組みで1日目が終わった。
いったん形勢に差が付くと逆転しにくいのがこの戦型の特徴だ。再開してからもじっくりした流れは変わらず、一手一手に慎重にならざるを得ない。3手連続で長考したあたりで渡辺は「かなり悩ましかった。何をやっているのか分からなくなった」。豊島も「難しかった」と振り返った。
渡辺三冠、苦心の攻め
渡辺は苦心の末、攻めの糸口を見いだし、後手陣に迫る。これをきっかけに局面の流れが急に速くなり、一気に終盤戦に突入した。
A図は、豊島が5一にいた角を△7三角と飛び出したところだ。3四にいる角が先手玉をにらんでいて厳しく、渡辺には5五の金を助ける適当な手段がない。7三の角はもともと先手から攻められて2二から3三に、さらに追われて5一に逃げた角だ。A図以下は▲8六歩△5五角▲8五歩△8一飛▲2二成香△同角と進み、1周して元の位置へ戻る大転換を見せた。
この一連の折衝で後手は大きな駒得を果たし、先手は攻め駒不足に陥った。
「△5五角と金を取られた時点…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル