15年ほど前、厚生労働省の安全衛生部で、あらゆる職場で働く人の安全や衛生面の対策を検討する仕事をしていました。政府統計や学術論文、テレビや新聞のニュースなどから、主に労働に関わる情報を調査・分析しました。適切な政策の実行には、関連する統計やデータの分析が欠かせないからです。
国土交通省で書き換えが明らかになった「建設工事受注動態統計」も当時、よく確認していました。建設工事の受注動向がわかり、政策を考える上で重要な参考資料となるためです。
例えば、この統計からある種類の工事が増えていることがわかったとします。工事が増えれば転落や墜落といった事故が増える恐れがあるため、しっかり安全対策をするように、関係団体に呼びかけます。今回の問題は国交省だけではなく、この統計を参考にしている他の省庁の政策にも影響を与えた可能性があります。
今回の問題では、事業者から都道府県に提出された調査票を消しゴムで消して書き換えていたとの報道があり、とても驚きました。私は厚労省職員だった当時、地方の労働局や労働基準監督署に出向し、企業などから提出される労働関係の調査票を受け取っていました。
職員が調査票の生データを書き換えることは当然、やってはいけないことになっていました。書き換えるという発想すら生まれませんでした。調査票に記入漏れがあった場合でも、自ら書き足すことは決してせず、その場で業者に記入してもらいました。書き換えをした都道府県職員の中には「おかしいな」と思った職員もいたと思いますが、その声は届かなかったのかもしれません。
統計作成の現場で感じたことは
今回の件で「建設工事受注動態統計」の信頼性は大きく損なわれましたが、その他の役所が出す統計やデータは信用できるのかというと、そうとは言えません。
「数字の嘘(うそ)を見抜く本」の著書がある田口勇さん。インタビューでは、数字に惑わされないための簡単なコツについても触れています。
私は当時、「労働災害発生状…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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