京王線刺傷事件、被告が「ジョーカー」に投影した思い(前編)
ハロウィーンの日、アメリカの人気映画「バットマン」の悪役「ジョーカー」に扮した男は、京王線の電車内で乗客を刺し、車内に火を付けた。約3カ月前に発生した小田急線の無差別刺傷事件を参考にしたという犯行。身にまとった「悪役」の衣の下で、男は何を考えていたのか。
6月26日午前、東京地裁立川支部であった初公判に、服部恭太被告(26)は黒っぽいスーツ姿であらわれた。白いシャツと青いネクタイに黒髪の丸刈り。ジョーカーをまねて緑色のシャツと紫色のスーツを身につけ、髪を金色に染めていた事件当時の姿とは対照的だった。
被告は2021年10月31日の午後8時ごろ、東京都調布市内を走る京王線の特急電車内で男性(当時72)の胸をナイフで刺して重傷を負わせたほか、ライター用オイルをまいて火を付け、近くにいた乗客12人を殺害しようとしたなどとして、殺人未遂や現住建造物等放火などの罪に問われた。
検察官が起訴状を読み上げると、被告は「(1人を)ナイフで傷つけたこと、ナイフを携帯したこと、火を付けたことは認めます」と答えた。一方、放火が他の12人に対する殺人未遂にあたるかは「分かりません」と述べた。
被告はなぜ、凶行にいたったのか。法廷でのやり取りからたどる。
6月下旬から約1カ月にわたって開かれた公判で、服部被告は事件にいたった経緯や人を殺害することに対する考えを語りました。生い立ちや経緯をたどる「前編」と、事件当日を追った「後編」に分けてお届けします。
2度の自殺未遂を経験
被告は福岡市内で生まれ育った。母親と5歳下の妹との3人暮らし。両親は被告が幼いころに離婚し、父親とはあまり接点がなかった。
小学校高学年になると、女子生徒を中心にいじめられるようになった。「住んでいた家が古く、虫が出るような家で、自分のランドセルから虫が出てきたことがきっかけだった」という。
中学校に進学するといじめはエスカレートし、無視されたり、物を投げつけられたりするようになった。
被告は自宅の屋上で、首つり…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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