池上彰の新聞ななめ読み
「特ダネ」とは、何か。私もNHK記者時代、特ダネを求めて四苦八苦していました。
振り返ってみると、いずれ発表されるであろうことを他社に先んじて伝えることに熱中していたのではないかという反省があります。本当の特ダネとは、その報道がなければ世の中の人が知ることがなかったという種類のものではないでしょうか。
その手の特ダネこそ取材力がものを言う。7月27日付本紙朝刊の1面トップには快哉(かいさい)を叫びました。次のような書き出しの記事です。
〈東日本大震災の復興事業を請け負った大手ゼネコンの支店幹部らに提供する目的などで、複数の下請け企業が不正経理による裏金作りを行っていたことがわかった。朝日新聞の取材で確認した税務調査内容などによると、裏金は少なくとも計1億6千万円にのぼる。こうした裏金の原資は、復興増税などを主な財源として投じられた国費だった〉
この記事に「朝日新聞の取材で確認した」という文章があります。これが、いわゆる「調査報道」です。当局の発表をそのまま書くのではなく、自社の責任で報じる。これはリスクのある行為です。たとえば警察や役所の発表をそのまま書いていれば、間違った内容が含まれていても、発表した主体の責任です。
しかし、「朝日新聞の取材で」と書く以上、記事の全責任は朝日新聞社が負うのです。
この記事がなぜ大きな扱いになるかといえば、裏金の原資が国費だったからです。私たちの税金で行われている復興事業のお金の一部が裏金に回り、ゼネコン幹部が我々の税金で飲み食いしていた、というわけです。読めば読むほど怒りが湧いてきます。続きを読みましょう。
〈取材で確認できたのは、清水…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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