心がしんどい時、どうすれば? 臨床心理士の倉光修さんに聞く

 心がしんどくて、どうしたらいいのか分からない――。そういう経験はありませんか。身近な人が苦しみを抱えているけれど、どう接したらいいのか悩んでいる人もいるかもしれません。東京大学学生相談所の元所長で臨床心理士の倉光修・放送大学特任教授に話を聞きました。

気力が湧かない時もある

 人は、心が元気な時には、自分がどういう行動を取ればいいかが分かるし、実際にそういう行動を取っています。でも心が傷つくような出来事があったり、悩みや苦しみが生じたりした時には、何をする気力も湧かなくなってしまうことがあります。「職場に行く」「部屋を片付ける」といったことが社会的に望ましい行動だということは分かりつつも、どうしてもその気になれない。では、どうしたらよいかが思いつかない状態になってしまう。

 心理カウンセリングでは、まず自分がどんな状況にあるかを「表現」してもらいます。説明ではなく「表現」と言ったのは、苦しいことやつらいことは、言葉にしにくいことも多いからです。そこで、たとえば子どもたちには、プレイセラピーと言って、絵を描いたり、人形遊びをしたりするなど、心に浮かぶイメージを表現できる場を提供する。カウンセラーは、プレイルームでのやりとりを通して、こんなつらいことがあったのかな、こんな願いがあるのかなぁなどと推測し、遊びの展開を見守る。

 大人は言葉で状況を話すことが多いですが、アプローチによっては、箱庭療法や夢分析を行うこともあります。いずれにせよ、どんなことが心に浮かび、どんな気持ちになっているかを表現してもらう。そのうえで、では、これからどうしたら良いか一緒に考え、その時々にやってみようと思うことが見いだせれば、当面それをやってみて、その後の経過を見守っていく、というケースが多いです。

「なぜこんなに苦しい」 本当に訴えたいことは

 苦しい時には「なぜ自分はこんなに苦しまなければならないんだろう」などという思いにとらわれることもあるでしょう。カウンセラーにそう聞いてくる人もいる。でも「なぜ」と言いつつも理由を聞きたいわけではない。本当は、悲しみや苦しみを訴えたいのです。

 その方の気持ちを理解しよう…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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