「全盲の写真家が、欧州とアジアへ単独で撮影旅行に行く」という知らせを同僚からもらった。が、一瞬理解できなかった。視覚を失った全盲の人が視覚芸術である写真を撮影できるのか。記事にできる話題なのか。疑問を抱えつつ、北海道名寄市まで会いに行った。
この写真家は大平啓朗さん(43)。山形大学の大学院生だった24歳のとき、薬品の誤飲で視神経を損傷、明暗も分からない完全失明となった。
道の駅のカフェで、向かい合って座った。
「両手をパーにして、前に伸ばしていただけますか」と大平さん。
大平さんも手を伸ばし、私の手に触れた。手持ちのコンパクトデジタルカメラをこちらに向け、カシャッ。戸惑う私が写った。
小学生のころからコンパクトカメラを操り、高校では写真部員。「自分でモノクロフィルムを暗室で現像、焼き付けたりしていた。写真少年でした」
誤飲したのはメタノール。致…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル