展示室は、まるで海の中でした。1970年代後半からゲイシーンを照らしたミラーボールがくるくる廻(まわ)る空間の中央には、全長6メートルの魚のような金網製の立体物。脱皮する最中にある人魚です。
【連載】VIVA LA VIDA!
昼は展覧会などの進行を担うアートマネジャー、深夜0時からはドラァグクイーン。二つの顔を持つ緒方江美/アフリーダ・オー・ブラートさんが、現代美術やクラブカルチャー、社会の多様性についてつづります。
大阪・国立国際美術館で今月6日から開かれているコレクション展「身体―――身体」で、同館に新たに収蔵されたインスタレーション作品「人魚の領土―旗と内臓」が公開されました。作者は、美術作家のブブ・ド・ラ・マドレーヌ。世界の舞台で闘い、私に生きる道を与えたドラァグクイーンでもあります。
ブブは90年代に芸術家集団ダムタイプに参加し、美術作品の制作と並行して、HIV/エイズと共に生きる人やセックスワーカー、性的少数者、女性等の人権と健康を守る市民運動に関わりました。
「人魚」は、生と死、地上と海など、異なる領域をつなぐ存在であり、親友をエイズで亡くしたことをきっかけに生まれた、ブブの使命とも重なるモチーフです。
人魚の腹部は裂け、衣装やシ…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル