1994年にあったルワンダの民族紛争で、80万人以上が虐殺され、多くの女性が性暴力を受けた。性暴力の末に生まれた子とその母親たちの過去と現在の姿を写真におさめ、取材した写真集が出版された。一時は出版が危ぶまれたが、写真批評家の竹内万里子さん(48)が編集や翻訳を担い、日本語と英語を併記して世界に発信した。
写真集は「あれから―ルワンダ ジェノサイドから生まれて」。これまで数多くの写真展を企画し、京都芸術大学で写真史などを教える竹内さんが関わるきっかけとなったのは、11年前にフランスで何げなく手に取った一冊の写真集との出会いだった。
母の苦悩「どうしても我が子愛せない……」
「ルワンダの母子の視線に射抜かれた」。竹内さんがそこで手にしたのは、写真集「Intended Consequences」。イスラエル出身のジョナサン・トーゴヴニクさんが2006年にルワンダを訪れ、性暴力を受けて妊娠・出産した母親とその子ども30組を写真におさめたものだった。
トーゴヴニクさんは、母親たちにインタビューをした。トラウマや周囲の偏見、性暴力を受けた際にかかったエイズに苦しみながら子どもたちを育てた苦労の話……。「どうしても我が子を愛せない」と告白する人もいれば、「殺そうと思っていたのに、姿をみた瞬間に愛してしまった」と語った人もいた。竹内さんは「重い沈黙を破って語られた経験や彼女たちの強さは、私の想像をはるかに超えていた」。
衝撃を受けた竹内さんは、この写真集の日本語版を出版するために奔走。10年、京都の出版社「赤々舎」から「ルワンダ ジェノサイドから生まれて」を出した。大きな反響をよび、重版された。
それから12年後の18年、トーゴヴニクさんは、06年に撮影した家族のうち16組の母子を再訪し、前と同じ場所で写真を撮った。前回インタビューしたのは母親だけだったが、今回は成人した子どもたちにも話を聞いた。
トーゴブニクさんは今回も写真集の出版を希望したが、出版不況でどこの国の出版社も手をあげなかった。相談を受けた竹内さんは「広く世界に伝えるため、英語を併記して出版したい」。今年2月、クラウドファンディングで約350万円を集めた。
成人して知る事実 「いきなりどん底に……」
続編となる今回の写真集では、…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル