子どもを狙った性犯罪に頭を悩ませる大人のもとに、赤ちゃんのお尻に着想を得たピンク色のキャラクター「おっしりー」が現れる。「悩めるパパ、ママ。そんなときはまず性教育。ぼくと一緒に学んでいこう」「プライベートゾーン(水着で隠れる部分など)」や「嫌なことにはノーと言う」など、子どもに何を教えたら良いか学んでいく。軽妙なタッチの根底にあるのは、性暴力への怒り。作者のたもりんさん(26)=ペンネーム=自身も被害経験者だ。(共同通信=三浦ともみ) ▽悪いのは自分? たもりんさんは美術大3年のとき、年上の画家の男からレイプされた。男とは、同じ展覧会への出品をきっかけに知り合った。優しく声を掛けられ、強引な印象はなかった。ある日、男の作品を見ようとアトリエを訪れた際、急に馬乗りになられた。突然の出来事に驚き、体が動かなかった。感情を遮断し、心と体が切り離れたような感覚になった。心のバランスが崩れ、4年生の卒業制作は「めちゃくちゃだった」。それでも「せっかく美大にきたんだから、悔いを残したくない」と思い、大学院に進んだ。
だが、男が同じ街にいると思うだけで、次第に苦痛を感じるようになった。逃げるように頻繁に地元に帰り、友人宅を転々とした。大学のある街に戻るため、電車に乗ろうとすると足がすくんだ。結局、大学院を中退した。辞める際に男性の指導教員に被害に遭ったことを伝えたが、「もう終わったことでしょう。いいから作品を作ってよ」と突き放された。 ▽変わらない加害者 その頃から、同じ男による被害者が他にもいることが、SNSを通じて分かってきた。「実は私も・・・」とつながったのは約10人に上った。たもりんさんも含めて被害者には共通点があった。肉親との関係が安定しないなどの不安を抱え、頼れる人がいないこと。男はそこにつけ込み、加害していた。 「被害者は誰にも相談できず、男に依存するような状態にさせられていた。ひきょうなやり方だったことに、後から気付いた」。警察に複数の被害が出ていることを伝えたが「時間がたっていて、物的証拠もないため捜査は難しい」と言われた。 数人と一緒に、弁護士を通じて男に被害を訴えた。男は加害を認め、示談が成立した。ただ、男はその後も街に残り、今も変わらず創作活動を続けている。一方、街に居られずに去った被害者は、たもりんさんだけではない。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース