貧困や虐待などで実の家族と暮らせなくなった子どもを、守り育てる児童養護施設。日々の暮らしの中で、思春期を迎えた子どもたちの性への関心にどう答えるか。職員の多くは頭を悩ませている。
7月中旬の土曜日、午前10時前。雨が降りしきる中、松山市内にある施設の敷地内の集会所に、傘を差した子どもたちが集まってきた。前方にスクリーンが下ろされ、「いのちの講座」と映し出されている。
「生きているからできることって何かな?」。席についた小学6年から高校3年までの18人を前に、外部講師の女性が問いかけ、話を始めた。
「自分の体に触ってごらん」「隠しておきたいところはどこ?」
子どもたちは、自分の腕や口に触ったり隣の子と握手をしたりしながら、他人に触られたくない「プライベートゾーン」の知識を教わっていく。性教育の講義だ。
中学生の女の子が、前のめりになって手を挙げた。後方に座った高校生の女の子は、うつむいたまま微動だにしない。おなかが出た妊婦の絵が映し出されると、軽い笑い声が上がった。部屋の隅のソファには中学生の男の子が寝そべり、職員につきそわれている。
この部屋には、性被害にあっ…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル