佐藤美千代
【石川】陸上自衛隊での性被害を告発した、元自衛官の五ノ井里奈さん(23)が3日、金沢市内で講演した。講演は初めてだといい、苦悩しながら手探りで行動を起こし、加害者の謝罪を実現した経緯を振り返り、「自衛隊が変わることを信じたい。男女に関係なく働きやすい環境になってほしい」と語った。
五ノ井さんは宮城県東松島市出身。小学5年で東日本大震災に遭い、避難生活を支える自衛隊員に憧れた。通っていた柔道場が、震災を機に金沢市の道場と交流し、行き来を続けた縁で今回、講演に訪れた。
自衛隊では男性隊員による性被害を上司に訴え、調査されたものの事実と認められなかった。休職中の今年3月、死を選ぼうとした瞬間に地震が起き、「はっと気づかされた。震災で生きられなかった人がいる。闘わなければと思った」。
在職し続け、柔道で五輪を目指す道もあったが、「自分の夢をとるより、後輩たちを同じ目に遭わせたくない」。事実の認定や謝罪、再発防止を目的に、どうすれば思いが世間に伝わるか考え、行動に移した。
退官後、ユーチューブの番組に出演し、顔と名前を公にして被害を訴えた。ウェブ上で10万人以上の署名や同じ被害者の声を集め、8月に防衛省に提出。全隊員を対象にした特別防衛監察、加害者からの謝罪といった対応を引き出した。
五ノ井さんは「皆さんのおかげで変わろうとしている」と賛同や励ましへの感謝を述べ、「何かをされたらずっと黙っていた、弱い、普通の人間。ただ、変えたいという思いは誰よりある」。
県内外から集まった約100人の聴衆に「行動は小さなことでいい。壁にぶち当たるけど、何とかなる精神で一歩踏み出してみては」と呼びかけた。(佐藤美千代)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル