真山仁のPerspectives:視線
まるで小説の展開そのものだ――。
2018年11月19日、東京・羽田空港から始まった日産自動車会長(当時)カルロス・ゴーン被告の逮捕劇を見て、私はそう感じた。
バブル経済崩壊もあり経営危機に陥った大手自動車メーカー日産に現れ、「マジック!」とまで言われるV字回復を果たしたカリスマ経営者が、東京地検特捜部に逮捕されるとは。
容疑は、実際よりも報酬金額を少なく見せかけて有価証券報告書に記載した金融商品取引法違反の疑いだった。
あまりにも派手な逮捕劇を見た私は、そこに強い違和感を抱いた。
すなわち法的な決着がつく前に、カリスマ経営者の逮捕を華々しくメディアが報道し、世論の注目がゴーン被告にばかり集中するという事態に、だ。
事態は現在進行形でわからないことも多いが、小説家として、この事件を読み解いてみたい。
逮捕後、ゴーン被告に対する被疑事実が徐々に明らかになる。そして、絵に描いたようなカリスマの堕落が、日に日に暴かれていく。やがて、メディアの矛先はゴーン被告の強欲ぶりに集中する。その結果、特捜部によるゴーン被告逮捕の本質が見えなくなってしまった――。
では、事件の本質とは、何か。
それは、日産とのルノーの新たな関係の模索ではないか。
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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