鍋を囲んでしゃぶ、しゃぶ、しゃぶ。今や定番の肉鍋料理の名は、戦後の日本人を元気づけたいと願った大阪の店で生まれたという。
肉をたくさん食べてもらえるメニューを
ぐつぐつと煮えたぎった熱湯に、薄切りの肉をくぐらせる。今や日本を代表する鍋料理「しゃぶしゃぶ」が、大阪発祥とは知らなかった。
しかも、冬の料理のイメージが強いが、元々は夏向けのメニューだとか。耳にも楽しい親しみやすいネーミングは、ある偶然から生まれたものだという。
戦後の1952年。今も大阪・北新地にある肉料理の店「永楽町スエヒロ本店」の先々代店主、三宅忠一(ちゅういち)さんが命名したという。きっかけは、元気がなくて体格も小さい日本人を励ましたいとの思いだった。
「年中、肉をたくさん食べてもらえるメニューを」と研究を始めた。当時看板メニューだったステーキは「脂っこくて、たくさんは食べられない」。目を付けたのが、中国料理の「シュワンヤンロウ」だった。
薄切りの羊肉を、煙突が高く飛び出た独特の形の鍋で調理する。これをヒントに出汁(だし)に肉を泳がす調理法を採り入れた。適度に脂が落ち、夏でもさっぱりと牛肉を食べられる。
肉をたくさん食べられるよう、タレにも工夫を凝らした。門外不出の「胡麻(ごま)酢」だ。甘めで粘り気のある一般的なごまダレとは別物で、サラッとしていて、後味軽く、箸が止まらない。2種類のごまをブレンドし、煎った後に10時間すりつぶす。そこへしょうゆや米酢、かんきつ系の酢などを加えて作ったものだ。
ブリ、ハモ、タイ、カニ…。日本人が「しゃぶしゃぶ」するのは、もはや肉だけではありません。記事後半では、今や無限の広がりを見せる「しゃぶしゃぶ」文化について、4代目に語って頂きました。
研究に2年 料理名にもこだわりたかった
「味に自信はある」。研究に2年を費やしたメニューだ。それだけに料理名にもこだわりたかった。
頭を悩ませていたある日、ふ…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
Leave a Comment