愛していたから、簡単には折り合えない コロナが奪った弔いの過程

 死は誰にでも平等にやってくる。大切な人との別れによる悲しみも、時を選ばず訪れる。遺体を美しく修復する「エンバーミング」の第一人者、橋爪謙一郎さん(55)に、深い悲しみを受け入れるにはどうすればいいか聞いた。(松田果穂)

生前の「その人らしさ」を引き出す

 事故や病気などで傷ついた遺体に消毒や防腐処理を施し、安らかな姿にして遺族の元へ帰すエンバーミング。時間の経過による遺体の変化を防ぎ、感染症の心配や時間の制約なく、生前の表情に近い姿で別れの時間を取れるようにする。

 最期の姿は残された人の記憶にいつまでも残る。だからこそ遺族からできるだけ生前の姿を詳細に聞き取る。痩せた頰(ほお)に薬液を注入したり、元気だった頃の表情に近づける化粧を施したりして、「その人らしさ」を引き出す。

 「どんなに覚悟をしていても、本当の意味でお別れの準備ができている人など誰もいません。残された人が気持ちの整理をするための『心のゆとり』を作るための仕事です」と橋爪さんは語る。当時、日本人の技術者がいなかったこの業界に飛び込んで28年。これまで、5千体以上の遺体と向き合ってきた。

 北海道千歳市で葬祭業を営ん…

この記事は有料会員記事です。残り2196文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

Japonologie:
Leave a Comment