慶応大理工学部で知った勉強法 プロ野球でも感覚大切に

年が明け、いよいよ受験シーズンを迎えました。16日には大学入学共通テストが始まります。各界で活躍する受験経験者や、さまざまな分野で学びを深めている現役大学生・大学院生たちからの、受験生へのメッセージを随時お届けします。

中日ドラゴンズ・福谷浩司投手

1991年生まれ、愛知県出身。愛知県立横須賀高校から慶応大理工学部に進み、ドラフト1位で中日ドラゴンズへ。2020年は8勝、防御率2点台の好成績。

 高校受験の時、志望校をどうするかで初めて両親ともめました。両親からは私立の野球の強豪校を勧められましたが、自分では通用しないと思った。結果的に両親は僕の思いを尊重してくれ、進学校の愛知県立横須賀高校に進みました。

 高校では、授業中は授業を聴く、練習中は練習に集中、とメリハリをつけた。試験前の部活動が休みになる期間に、友だちと集まって勉強していました。苦手な科目は赤点にならなければいいと。得意な科目で1点でも多くとれるように考えていました。成績は上位1割くらいでした。

 高2くらいまでは、名古屋大理学部に進みたかったんです。でも模試の判定をみると合格ラインに届くのは難しいかなと思い、高3の夏に野球部を引退し、AO入試で慶応大の理工学部に合格しました。

 1次試験は書類、2次は面接。書類選考では神経の電気信号についての論文を書きました。高校生活で悩んだり不安になったりすることもあったので、脳の仕組みに興味がありました。

 よく「野球と勉強を両立してたんだね」と言われます。でも勉強はテストでいい点をとるために教科書を丸暗記するだけでした。

 大学でも最初は卒業のために教科書をがんばって覚えていただけ。大学3年で研究室に入り、卒業論文のために初めて自分で考えて課題を見つけ、学んだ。「これが本当の勉強だ」と思いました。

 与えられたものをただ覚えるのは実は簡単なんですよね。だから、学校の試験の点数にこだわりすぎても、そのあと大学生や社会人になった時には役に立たないと思います。

 プロ野球でも似た経験をしました。2年目に結果が出たけど後が続かず、全てを否定された気になった。色んなことを周りから言われ、その通り練習しても何が正しいかわからず、身につかない。例えば投げたボールの回転数を機械で測っても活用法がわからない。

 でも、3年ほど前から「自分は何を大事にしたいのか、どんな人生にしたいのか」と考え始めました。目の前の結果よりも「前はできなかったことができるようになった」という感覚を大切にするようにした。

 個人的にトレーニング施設に行き、専門家から体の動かし方を教わり、フォームを改善しました。機械はその結果の確認に使いました。機械もトレーニングもあくまで方法の一つに過ぎないと気づいたわけです。

 19年はケガで1試合しか投げられず、給料も今までで一番下がりましたが、充実していました。翌年の20年には結果を出せました。

 受験勉強も同じではないでしょうか。勉強法について色んなことを言われると思いますが、そこから自分に合った方法をみつけることが一番だと思います。

 結果だけみると、志望校に受かった人とそうでない人に分かれるのかもしれない。でも受からなかった人がその後の人生で挽回(ばんかい)するチャンスはいくらでもある。いま30歳になって大切だと思うのは、自分で課題を見つけ、それを克服するためにどう行動するのかということ。そういう勉強の方が、大人になってから必要だと思います。

 僕も、福谷浩司という人間としてもっと成長したい。自分で課題をみつけて、前向きに取り組んで。理想は2、3年後にいまの自分を振り返り、「あいつまだまだガキだったな」と思えるようになることです。(聞き手・宮崎亮

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 ふくたに・こうじ 1991年生まれ、愛知県出身。愛知県立横須賀高校から慶応大理工学部に進み、ドラフト1位で中日ドラゴンズへ。2020年は8勝、防御率2点台の好成績。


Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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