「憲法季評」 松尾陽・名古屋大学教授(法哲学)
国家は、個人の自由にとって最強の守護者であると同時に、最も危険な存在でもある。強大な力は両刃の剣となる。近代の憲法思想を形成していた思想家は両刃性を理解しつつ、この怪物をどのように制御するのかという課題と格闘していた。人権論も国家との関係で発展した。
現代の怪物は国家だけではない。大企業の資本には個人の生を大きく左右する力がある。多国籍企業が規制の緩い国の工場で労働者を酷使している場合もある。最新の情報技術の発展も企業の支配力を高めている。
個人の自由を守るという観点からは、この現代の怪物をどのように制御するのかも大きな課題である。近年、「ビジネスと人権」というラベルのもと、企業が人権を尊重する責任のあり方が議論されてきている。
この「ビジネスと人権」の問題が日本で最も先鋭に表れたのは、旧ジャニーズ事務所をめぐる出来事だろう。
事件は今年多く語られてきた…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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