ボタンを押すと出てくるのは飲料でなく食品――。ここ数年、一風変わったフード系自動販売機が注目を集めている。長引くコロナ禍もあり、非対面や非接触で購入できるのがメリットのようだ。各地の実情を探った。(編集委員・小泉信一)
硬貨を入れ、しばらく待つと温かいうどんやハンバーガーが取り出し口から出てくる。「レトロ自販機」と呼ばれるフード系自販機を取り扱った飲食スペースが群馬には各地にある。
伊勢崎市富塚町の国道沿いに店を構える「自販機食堂」もその一つ。元は食品加工会社「ミトミ」が自社の新商品を試験販売する場所だった。「食堂」になったのは2014年11月。昭和の雰囲気を懐かしむ中高年だけでなく、SNSなどで存在を知った若者が珍しがって買いに来る。
「機械の維持管理は大変だが、昔ながらの自販機はそれ自体が昭和の面影や香りを漂わせている。いつ壊れてもおかしくないはかなさもあり、それがお客様の心に響くのではないか」
店長の都丸佳津行(かつゆき)さん(52)はそう語る。「幻のハンバーガー」と呼ばれる「グーテンバーガー」を扱う自販機は1975(昭和50)年ごろの製造という。
無人で24時間営業。コロナ禍で対面販売が避けられるようになったことも、人気の理由のようだ。てんぷらうどん(330円)の麺やつゆは自家製。神奈川県から時々来るという男性は「ゆったりとしたアナログ感がたまらない。ゆでたてに近い食感も魅力です」。
きのこカレーや猪豚のもつ煮も キャンパーに人気
人口の少ない町や村でも、フード系自販機は活躍している。
四方を深い山々に囲まれた県西部の上野村(人口約1100人)。地域活性化事業の一環として村を貫く国道沿いに設置された。
扱っているのは、地場産の農畜産物を使ったレトルト食品。昨年7月から24時間稼働しており、きのこカレー、まいたけおこわ、いのぶた(猪豚)のもつ煮などがイラスト入りの箱に入っている。
「村にはコンビニはなく、早朝や夜間に営業している店も少ない。地元の人だけでなく、村に遊びに来るキャンパーにとっても重宝がられている」
自販機を設置した会社社長の…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル