「戦後、長い年月が経った。父はずっと、故郷に、家族の元に帰ってきたかったんじゃないか」。松江市乃木福富町の細田善男さん(79)は、手元の古いアルバムを見つめながらつぶやいた。
第2次世界大戦末期の1945年2月1日、フィリピン・ルソン島で32歳で戦死した父、仙次郎さんの遺品だ。元米軍兵士の遺族が米国で保管していたが、旧日本兵の遺品返還に取り組む民間団体オボン・ソサエティ(オレゴン州)を通して、7月、善男さんの元に返還された。元米兵は、アルバムを激戦地の硫黄島から持って帰ったとみられるが、なぜルソン島で戦死した仙次郎さんのアルバムが硫黄島にあったのか、その経緯は分かっていない。
B5判で、角が所々はげかけた黒い表紙には、馬にまたがった男性が雄々しくやりを突き下ろすデザインがあしらわれている。
アルバムには、出征前、当時3歳の善男さんを抱く仙次郎さんを囲む親戚たちや、戦友、宍道湖の嫁ケ島の写真など約40枚が残されていた。42年に撮影されたこたつを囲む仙次郎さんと母キエさん、姉悦子さん、善男さんの家族4人の写真は、同じものが善男さんの自宅にも残っていた。
「アルバムを持って出征したこ…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル