戴冠式には行けなくても 福島県の村に「パスポートのいらない英国」

 新緑が映える高原に設けられた黒い鉄門をくぐり抜けると、ユニオンジャックがはためく。道路標識はどれも英語表記。さらに進むと、重厚な洋館が建っている。「ハロー」。気さくに声をかけてきたのは外国人だ。ここでは英語が「公用語」なのだという。

 オックスフォード大学の食堂をイメージしたレストラン、優雅なアフタヌーンティーを楽しめる喫茶室もある。異国情緒あふれるこの場所は、福島県南部の天栄村にある「ブリティッシュヒルズ」。俳優の松本潤さん出演のTVドラマ「花より男子」や、吉沢亮さんや橋本環奈さんが出演した映画「ブラックナイトパレード」などのロケ地としても知られる。「パスポートのいらない英国」のキャッチフレーズに誘われ、足を踏み入れた。

 施設はリゾートホテルと英語研修施設を兼ね、1994年開設。7万3千坪の敷地には、時代考証に基づき再現された中世英国の荘園領主の邸宅や、9棟の宿泊棟などが点在する。

 建築資材や室内の調度品はどれも英国から輸入した本物。年季の入ったテーブルやベッドは触ったり、座ったりすることもできる。

 施設を開設したのは、神田外語大(千葉市)などを運営する学校法人・佐野学園(東京)。「英語を学ぶということは、英国文化に親しむこと」との考えから、英国が栄えた中世にこだわった施設にした。標高1千メートルにあり、朝晩の霧に包まれる景色もスコットランドのハイランド地方に重なったという。

 施設内のあいさつや飲食店での注文は基本的に英語だ。スタッフ約120人のうち、約40人が外国人。出身地は英国、カナダ南アフリカアルゼンチンなど10カ国以上におよぶ。

 96年からは英語習得をめざす企業・個人の研修を受け入れており、中高を中心に全国から年間約450校が利用する。コロナ下で海外との行き来ができなかった際は、「海外留学の代わりの研修先」として訪れる学校も増えたという。

 宿泊のほか、食事や喫茶だけの利用もできる。英語講師とブレンドティーやスコーンを作る講座や、名探偵シャーロック・ホームズからの手紙を元になぞ解きに挑む脱出ゲームなど、様々なイベントも楽しめる。

 「英語はちょっと……」と苦手意識がある人もご心配なく。来場者の語学レベルに合わせてくれて、日本人スタッフもいるので日本語でも大丈夫だ。

 広報・オペレーション部の主任星知恵美さん(48)は「ビザもパスポートも不要で、円安も関係ありません。気軽に英国気分を味わえる施設にお越しください」。6日、ロンドン中心部はチャールズ国王の戴冠(たいかん)式に沸いた。(力丸祥子)

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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