新型コロナウイルスの感染拡大は「接客を伴う飲食店」にマイナスの影響を与えている。夜の世界で働く人たちの労働組合「キャバクラユニオン」の布施えり子さんによると、キャバ嬢たちから「給料がもらえず、家賃が払えない」「解雇された」といった相談が寄せられているという。布施さんは「一刻も早く救済してほしい」と訴える。布施さんに聞いた。(ニュース編集部・山下真史)
●家賃が払えない人も
――どんな相談が寄せられていますか?
外出自粛で客が減り、長く働きたくても「早上がり」を命じられたり、シフトを削る「出勤調整」があったりして、「給料が減った」という相談があります。さらに「給料がもらえない」「解雇された」というものまであります。
――相談数は増えていますか?
正確な数は把握できていませんが、通常の3倍くらいになっていると思います。例年でいえば、3月、4月は「歓送迎会シーズン」です。繁忙期にあるため、キャバクラ業界では、給料未払いやクビ切りはなく、相談数も少ないという特徴があります。しかし、今年はコロナの影響でかなり増えています。
――状況は深刻ですか?
かなり深刻です。もともと、ほとんどのキャバ嬢はそれほど稼げません。普段でも手取りは、せいぜい月20万円くらいです。貯蓄もできません。それがこの状況で、手取りは10万以下となっている人もいます。
キャバ嬢の中には、奨学金を返している人や、DVを受けて逃れてきた人、シングルマザーなど、貧困が原因で働いている人も少なくありません。生活するだけでいっぱいいっぱいです。そこにコロナの影響があって、家賃すら払えなくなっています。
また、キャバ嬢にとって、携帯はライフラインなのですが、それが止められるおそれもあります。このままだと仕事もできなくなります。次のカードの支払いもできないような差し迫った状況にあります。
●リーマンショックや震災よりもひどい状況
――キャバクラはいわゆる「3密」にあたります。感染の恐怖については?
もちろん感染の恐怖を感じていますよ。しかし、その前に差し迫った経済の問題があるのです。
リーマンショックや東日本震災のときも客が来なくなることがありましたが、今は一番ひどい状況になっていると思います。
昼職(風俗・水商売以外)があり、それだけでなんとか生活できる場合は、もうキャバクラで働くのをやめている人も多いです。残っているのは、感染の恐怖があっても、食べるために働かざるを得ない人たちです。
――どうしたらいいでしょうか?
生活保護など、現行制度のアドバイスをしたいところですが、たとえば、DVから逃れている人にとってはハードルがあります。
というのも、生活保護の申請をする際、福祉事務所から世帯のほうに連絡がいってしまうことがあるからです。(止めてもらうことは可能だが)「自分の居場所が知られるくらいなら、死んだほうがマシだ」と思ってしまうんですね。
また、さまざまな事情があって、実家に帰れない人もいます。親に感染させるおそれがあったり、田舎なので白い目でみられるおそれがあったりなどです。また、ほとんど職歴もないので、コンビニ・スーパーの面接も落とされます。しかたなく、風俗の面接に行った人もいますが、そこでも同じように仕事がなく、稼げない状況です。
だから、手続きがわかりやすくて、世帯でなく個人で受けられる一律の「現金給付」をすれば良いと思います。先ほどまでに述べた理由で、すでにお金がなく、ご飯を食べていない人がいます。現金給付してもらえないと死んでしまいます。
――ネット上には「キャバ嬢」に対する差別的な意見もあります。
今の状況は、普段差別されている人がより深刻に差別されるような状況になっていると思います。基本的に弱者が切り捨てられることが露骨になってきている。社会の悪い部分が、コロナの影響で悪化して、生活困窮者たちが追い詰められる。いかにしてバッシングをなくしていけるかが、今後の大きな課題だと考えています。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース