手渡された映画のパンフレット 美術館員が驚いた親戚からの一言

 東京出張の折、いつものように映画館に立ち寄った。新作映画のパンフレットを集めるためだ。

 その中に「ハッピーアワー」と題した映画があった。

 《ほとんどの登場人物を演技未経験者がつとめ、総尺5時間17分の大作となった》

 そんな一文に目がとまった。主演の4人はワークショップの受講生から選ばれ、ロカルノ国際映画祭で最優秀女優賞を受賞したという。

 監督は濱口竜介。当時は商業映画でデビューしていない無名の存在だった。

 「新人監督で素人の役者を使おうという人はいない。普通なら俳優を集めて撮るはずなのに」

 高知県立美術館スタッフの浜口真吾さん(60)は、新しい才能に出会ったようで、映画ファンとしてうれしかった。2015年のことだった。

 3年後に公開された「寝ても覚めても」は、カンヌ国際映画祭のコンペ部門に正式出品され、話題を呼んだ。濱口監督が自身の演出論について記した「カメラの前で演じること」(左右社)も手に取り、考え方に魅了された。「新しい演出方法に挑戦しながら、国際的に評価される長編映画を作り続ける監督が日本から出た」

 その喜びは驚きに変わった。

 浜口さんの父のいとこは、洋画家の濱口喬夫(たかお)。その息子の達男さんと酒を飲んだとき、一枚の紙を渡された。「寝ても覚めても」のパンフレットだった。

 「息子がこの映画を撮ってる…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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