捨てられない「ひとつ前」の搭乗券 あの日123便に乗らなかった私

 あれから36回目の夏が終わろうとしている。思い出すのは、手荷物検査場にいた夫婦と子どもたち。いつしか自分は傘寿を過ぎ、81歳になった。そのことへの申し訳なさがふと、よぎる。

 1985年8月12日。書道家の村尾清一さんは東京都内であった書道展の表彰式を終え、羽田空港にいた。思ったより早く着いたな。キャンセルが出たひとつ前の便に変えて、手荷物検査の列に並んだ。

 列の前には若い夫婦と小学生ぐらいの子どもが2人。子どもは水槽を抱えていた。夏休みに捕まえた魚でも入っているのかもしれない。「次の便にしたらどうですか」という係員の声が聞こえる。機内に持ち込めるかどうか、調べるのに時間がかかるのだという。その家族を追い越し、ゲートをくぐった。

 その日夜。大阪府箕面市の自…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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