戦後の闇市から発展したという「鶴橋鮮魚市場」(大阪市生野区)が立ち退き問題に揺れている。オーナー会社は、築60年以上の建物が「耐震基準を満たしていない」として取り壊しを計画。テナントの鮮魚店などが反発し、争いは法廷に持ち込まれた。古き昭和の風景の行く末やいかに。
JR鶴橋駅から東へ約500メートル。韓国料理店やキムチ店がひしめく路地を抜けた先に鶴橋鮮魚市場はある。闇市がルーツとされる卸売市場で建物は1958年に完成した。鉄筋コンクリート造り2階建て延べ約2900平方メートル。鉄骨むき出しの屋内には鮮魚やマグロ、淡水魚などの専門店が並び、料理人だけでなく一般の消費者も買い物に訪れる。
鮮魚店などで構成する組合が作成した「創立五十周年記念誌」によると、50年代初頭、三重県の伊勢、松坂でとれた新鮮な海の幸が列車で豊富に持ち込まれた。行商人らは当初、一般車両を利用したが、魚のにおいが問題となり、近鉄は63年に行商専用の「鮮魚列車」を運行。利用客の減少で今年3月に廃止されるまで、この市場を支えた。
おせち料理に入れる車エビを求めてやってきた地元の主婦(72)は、ここに40年以上通う。「スーパーと値段が変わらないのに品質が全く違う。ここにしかないものがたくさんある」
市場が転機を迎えたのは11年前。オーナー会社「鶴橋卸売市場」による耐震診断で建物全体で老朽化が進み、耐震性に疑問があると判定された。鉄筋が露出し、壁はひび割れ、漏水もあった。屋上の一部を改修して駐車場として使っているため、その重量に対して柱や壁が少ないことが問題になった。
テナントに一時的に移転しても…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル