自民党が夏の参院選公約の憲法改正に関する記述を作り直す事態になっている。憲法改正を公約の柱の一つに掲げ、参院選後の議論の活性化につなげたい考えだが、党憲法改正推進本部の下村博文本部長が作成した原案は党政務調査会の公約作成委員会(委員長・岸田文雄政調会長)に提出後、事実上撤回された。公約決定前に内容が報道されたことや一部の記述に疑問の声が出たためだ。
自民党の公約は同推進本部や各部会などがそれぞれの分野の原案を作成し、公約作成委でまとめる。公約作成委は5月29日に原案を主に6つの分野別にまとめ、出席者に示した。関係者によると、憲法改正の記述は示されず、平成29年の衆院選で掲げた公約が参考として紹介されたという。
下村氏は5月22日までに原案を提出していた。そこには9条への自衛隊明記など4項目の党の改憲案を列記し「国民の幅広い理解を得つつ、衆参の憲法審査会や党内外において丁寧な議論を行い、早期の憲法改正を目指す」と訴えていた。
国民投票法改正案に関して「早期成立を目指す」との記述もあった。党は26日までの今国会での改正案成立に向け衆院憲法審査会で野党と交渉中で、党内から「今国会の成立を諦めたと受け取られかねない」と異論が出た。また、原案が報道されたことを作成委メンバーの新藤義孝政調会長代理らが問題視した。
衆院憲法審の与党筆頭幹事も務める新藤氏は作り直しを求め、岸田氏も了承。岸田氏は近く安倍晋三首相(党総裁)と公約の最終調整をする構えだ。
首相は5月17日の党会合で、立憲民主党などが改憲議論を拒否している現状に触れ「議論さえしないのは政党としてどうなのか。憲法を議論する政党か、議論しない政党かを参院選で訴えてもいい」と述べた。公約で改憲議論に積極的に取り組む姿勢を示すとみられるが、首相が掲げる「2020(令和2)年の新憲法施行」の期限設定は見送られる公算が大きい。(田中一世)
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