放置自転車の撤去保管料は適切か――。大阪市が20年間も十分検討せず、2500円に据え置いていることを市監査委員が問題視した。この料金設定では事業経費の5割しか回収できず、市が税金を投入して赤字分を穴埋めしているからだ。ただ、値上げすれば所有者による引き取りが減る可能性もあり、市は対応方針を決めきれずにいる。
大阪市北区のJR大阪駅周辺。人が行き交う歩道上には十数台の自転車が並び、黄色い点字ブロック上までせり出しているものもある。
市にとって放置自転車は長年の課題だ。駅周辺などの「放置禁止区域」の放置自転車は撤去し、駐輪場の整備も進める。2019年度の駐輪場台数は16万9千台で、利用台数の11万2千台を上回るが、駅周辺の放置自転車は4千台にのぼる。国土交通省の19年調査によると、放置自転車台数は全国の市区町村で2番目に多い。
ただ、09年度と比べると駐輪場は2万4千台分増え、放置自転車は3万5千台減った。有識者らからなる市監査委員は5月、放置自転車対策に関する報告書で「立地条件などの実情に応じた対策に取り組んでいる」と評価。むしろ問題にしたのは撤去保管料だった。
市は撤去した自転車を保管所に運び、所有者が来れば撤去保管料と引き換えに返還し、20日間来なければ売却して収入に充てる。1台あたりの撤去保管料は、02年に1千円増の2500円として以降、見直しについて十分検討していない。
当時は、事業経費から引き取られなかった自転車の売却代を引き、撤去台数で割った金額をもとに算出した。保管所の建設費などは計算に含めなかった。
監査委が同じ方法で試算すると、17~19年度の撤去保管料は平均3088円となり、現在より588円高くなった。19年度の事業赤字は全体の5割にあたる2億6千万円で、これを市が税金で穴埋めした。
自転車法は「(事業経費は)利用者の負担とすることができる」と定める。市が撤去保管料を20年間据え置いていることについて、監査報告書は「どのような検討がなされてきたのかを書面で確認できなかった」とし、「原因者負担と本市負担の範囲が十分に検討されないまま事業が継続され、説明責任が果たされないリスクがある」と指摘。撤去保管料は適切なのか毎年検証するよう求めた。
市は今後の対応に苦慮している。52%だった放置自転車の返還率が、02年の増額改定後に9ポイント下がった経緯があるからだ。担当者は「費用全額を所有者負担とするのが筋との考えもあるが、返還率が下がれば撤去保管料の収入が減りかねない。市の負担が増えては本末転倒だ」と話す。
赤字に悩むのは大阪市だけではない。
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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