政教分離から考える日本 「世間」は真の意味で人権を尊重しているか

神里達博の「月刊安心新聞+」

かみさと・たつひろ

1967年生まれ。千葉大学大学院教授。本社客員論説委員。専門は科学史、科学技術社会論。著書に「リスクの正体」など

 先月、安倍晋三元首相が銃撃により殺害されるという、信じがたい事件が発生した。当初は「民主主義に対する挑戦」という捉え方が支配的だったが、逮捕された容疑者が、旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)への個人的な恨みからの犯行だと供述していることが明らかになると、世論も急速に変化していった。

 その後、政治家とこの宗教団体との関わりが次々と報じられたことから、今は「政教分離」に社会的な関心が集まっているようにも思う。今回はこの辺りから探ってみたい。

 そもそも政教分離は、キリスト教の力が強かった欧州諸国が近代化していく流れのなかで成立した考え方である。しかし同じ西洋諸国でも、その性格は国によって異なる。

 たとえば最も厳格とされるフランスは、革命期の国民議会が、カトリックに対して財産没収などの徹底した弾圧を行い、国家と宗教を力ずくで分離した。その後の歴史的経緯のなかで、このような敵対的な性格はかなり緩和されたものの、現在もフランス憲法には「フランスは不可分にして、非宗教的(ライック)、民主的、社会的な国家である」と明記されており、これは非宗教=ライシテの原則として知られる。

 米国も比較的厳しい政教分離…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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