愛知県岩倉市消防本部で3年前のコロナ禍の夏、複数の隊員が救急車のドアを閉めたままオゾン発生器で車内を消毒し、体調不良を訴えるトラブルが相次いでいたことがわかった。発生器の取り扱い説明書では、原則として無人状態での使用を求めている。
消防本部の伊藤徹署長は当初、取材に「(隊員の)命にかかわることで、あり得ない」と否定したが、後に「コロナ対応を模索中で、試験的にやった」と一転して事実関係を認めた。
消防本部は今年8月下旬~9月中旬に内部調査を実施。オゾンを浴びた隊員は計14人だったことを明らかにした。発生器を使った期間は「不明」としつつ、現在は隊員を乗せての使用はしていないと説明した。
オゾンは新型コロナや新型インフルなどのウイルスを不活化させる効果があるとされるが、濃度によっては人体に悪影響がある。このため、販売業者は緊急時など無人状態にするのが難しい場合は専用の防護マスクを必ず着用することも求めている。
消防関係者によると、トラブルが起きたのは2020年7月ごろ。岩倉市消防本部では救急搬送の現場から戻った救急車について、コロナ対策のためにオゾン発生器を持ち込んで車内を消毒。この際、複数の隊員が車内に残ったまま約30分間、発生器を使っていた。こうしたケースは複数回あったという。
消毒時に隊員らが身につけていたのは、販売業者が求めるオゾン専用の防護マスクではなく、コロナ対策として有効性が知られるN95マスク。発生器の使用後、複数の隊員が一時的にせきや涙が止まらなくなったという。
岩倉市消防本部が取り扱っていた発生器の販売業者は、全国の多数の消防署にも納入する。販売業者は、隊員ごと車内消毒したことについて「高濃度のオゾンを発生させるため、無人での使用が基本だ。有人の場合は専用の防護マスクなどの着用が必須だが、これは強毒性のウイルスのパンデミックでとる方法。コロナ禍でそんな使い方をした消防署は他にない」と指摘する。
総務省消防庁は、発生器の導入は各署の判断としたうえで、説明書に従って使用しているとみており、これまでに注意喚起などの通知は出していないという。(嶋田圭一郎)
オゾンの人体への影響(成人の場合)
0.01~0.02ppm→臭気を感じるようになる
0.1ppm以上→鼻やのどに刺激
1~2ppmで暴露時間が2時間以上→頭痛などの症状
5~10ppm→呼吸困難などの症状
50ppm以上で暴露時間が1時間以上→生命に危険な影響が生じる
※ppmはオゾンの暴露濃度。1999年、国会・政府答弁書から
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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