2009年から続く教員免許更新制について、朝日新聞が教員の任命権を持つ67教育委員会にアンケートしたところ、53教委(79%)が「見直しが必要」と回答した。更新のための講習が長時間労働に苦しむ教員の負担になっているなどとして、このうち7割が講習免除対象の拡大といった制度の緩和を求めた。
更新制をめぐっては文部科学相の諮問機関、中央教育審議会の委員会が見直しに向けた議論をしており、廃止論も出ている。アンケートでは、制度の実務を担う教委自身も課題を感じている実態が浮かんだ。
47都道府県と20政令指定市の教委に聞いたところ、「見直し」を選んだ53教委以外では、「現行のままでよい」としたのは5教委にとどまり、9教委は「その他」を選び、「国の動向を注視している」などと答えた。
見直しの内容について、53教委のうち39教委が「講習の受講期間を弾力化、免除を拡充するなど緩和する必要がある」を選択。夏休みなどに30時間行われる講習について、「多忙で受講が困難」(埼玉県)、「市の研修と講習内容が重複している」(浜松市)などが理由にあがった。「(受講忘れによる)『うっかり失効』で即失職は重すぎ」との指摘もあった。「廃止するべき」は1教委だった。
制度が、産休や病気療養で代わりの教員を確保する際のネックになっていることもわかった。更新制の課題について複数回答で聞くと、「教員経験があり教職についていない人を臨時任用する際、失効ですぐに任用できないケースがある」が53教委と最も多かった。例えば教員OBに臨時で講師を依頼しても、更新講習が未受講ですぐに教壇に立てない、といった指摘だ。「代替者の確保が一層困難」(山形県)といい、教員のなり手不足に制度が拍車をかけている形だ。
更新制のメリットは、複数回答で「定期的に最新の知識が得られる」(52教委)が最多。「自主的な研修の受講が少ない教員にとっても学びの機会になる」(26教委)が続いた。
更新制をめぐっては、萩生田光一文科相が今年3月、「物理的、経済的負担が生じている」などとして中央教育審議会に抜本的な見直しを諮問した。近く結論が出る見込みだ。
アンケートでは、教員免許を都道府県教委に代わって国が授与・管理する「国家免許化」についても聞いた。「賛成」「どちらかといえば賛成」は12教委、「反対」「どちらかと言えば反対」は13教委と賛否が割れた。「条件付き賛成」は5教委で、「都道府県教委の負担減につながる内容であれば賛成」(佐賀県)などとした。免許の国家資格化は、萩生田文科相が昨年6月の講演で「私見」としたうえで免許の国家資格化を目指す考えを表明した。(高浜行人、編集委員・氏岡真弓)
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〈教員免許更新制度〉 国公私立学校・幼稚園で教えるのに必要な教員免許に10年間の期限を設ける制度で、教員の資質向上のために2009年に導入された。それまでは終身有効だった。更新するには大学などで開かれる「更新講習」を30時間以上受け、教育委員会に申請する。費用は3万円程度で、原則、自己負担。教員でない人の一部を除き、講習を受けないと失効する。自民党の案をもとに制度化され、第1次安倍政権の教育再生会議も導入を促した。
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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