教科書会社の第一学習社(本社・広島市)が2015~16年度、高校教科書の採択に関係する学校や教員らに計1374件の利益供与をしていた疑いがあると、文部科学省が30日発表した。同社は複数の教科書会社による物品提供問題発覚後の16年の同省の調査では57件と過少申告しており、同省は再調査する。
この問題をめぐっては、16年の文科省の調査で、第一学習社を含む教科書会社4社が、19都府県の公私立140校の高校教員らに、教員向けの指導書など計約330万円相当を無料提供していたことが判明。この際、第一学習社は「14~15年度、41校に57件(計約140万円)」と申告していた。
しかし今年2月、匿名の通報を受けて文科省が同社に確認したところ、15~16年度、40以上の都道府県の学校や高校教員らに計1374件の物品提供をした可能性を示すリストが見つかった。社内調査で、少なくとも3都府県28校に46件(計約34万円)の物品提供をしていたことが確認された。同社は文科省に「当時の営業部長が意図的に減らした内容で報告した」と釈明。残りの1328件は「営業部長が退職しパソコンも残っていない。調査対象者の記憶も判然としない。物品は無償提供せず廃棄した可能性もある」と説明したという。
文科省は4月以降、リストに基づき物品を受け取った可能性がある学校や教員に裏付けの調査をする。教科書検定の規則では、不公正な行為をした会社は次の検定時に申請しても不合格となることが17年に定められたが、今回の物品提供はそれ以前に行われており、今回の高校教科書検定には適用されないという。
萩生田光一文科相は30日の閣議後会見で「極めて悪質な行為で大変失望している」と述べた。(伊藤和行)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル