保育士が園児を散歩先の公園などに置いたまま、気づかずに戻ってきてしまう――。こんな「置き去り」事案が保育現場で多発している。
朝日新聞社の取材によると、東京都に報告されただけで2017~20年度の4年間で94件(迷子などを含む)。都は今年度から、保育園向けの資料に「置き去り事故の報告が非常に増えている」と明記し、注意を呼びかけ始めた。
置き去りについては国に報告する必要がなく、施設側に報告を求めていない自治体も多いため、全体像はわからない。一つ間違えば命に関わる事案だけに、専門家は、実態把握や再発防止のための仕組み作りが必要だと指摘する。
20年度は28件、増加傾向
東京都では、置き去りや迷子について、都内の認可園と都が独自に認定する認証園に対し、区市町村を通じて報告を求めている。都によると、報告件数は17年度は計14件、18年度は計18件だったが、19年度は計34件、20年度は計28件と増加傾向だ。
園児の年齢は、19、20年度ともに3歳以下が7割超を占めた。いずれも園児にけがはなかった。
同じ公園にいた他の保育園のグループに交ざっているのを保育士が気付かなかったり、公園を飛び出していなくなった園児を点呼で発見できなかったりするケースがあったという。点呼後の一瞬の隙に園児が列を離れてしまったこともあった。また、園児が保育園から外に飛び出して見失うなど園内で起きた事例も一部あった。
報告義務がなく、把握しきれないケースも
ただ、都も置き去りの発生を把握しきれていないのが現状だ。足立区では19~21年度に計8件起きていたが、都への報告を怠っていたと今月4日に公表。都は認可外にはそもそも報告を求めておらず、実態を把握するのは難しい。
都の担当者は「置き去りは子どもの安全を脅かしかねない重大な事案だ」とする一方、「ヒヤリハットをどこまで報告するのかは施設によって温度差がある。保護者から役所に連絡があって把握できたケースもある」と明かす。
都は今年度から、保育園向けの講習会資料に「置き去り事故の報告が非常に増えている」と明記し、園外保育時の注意を呼びかけている。園を出発する際や、目的地に到着した際など、場面が変わるごとに人数確認を徹底するよう求めている。
一つ間違えば重大事故につながりかねない「置き去り」。ただ、実態把握のための仕組みは不十分です。記事の後半で詳しくお伝えします。情報提供やご意見もお待ちしています。メールは、dkh@asahi.com まで。
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル