京都大は4月、同大数理解析研究所(数理研)の望月新一(もちづき・しんいち)教授が、長らく未解決だった数学の超難問「ABC予想」を証明したと発表した。数理研が編集する国際専門誌「PRIMS」に掲載する。予想は今後新たな「定理」として生まれ変わるが、海外の研究者からは批判も出ており、論戦が活発化しつつある。望月氏の論文は独創的な理論を駆使しており、世界でも内容を理解できているのは10人程度とされる。(共同通信=浅見英一)
▽ABC予想とは
ABC予想は、整数の足し算と掛け算の関係にまつわる予想で、1985年に欧州の2人の数学者が提唱した。内容はこうだ。共通の約数(公約数)を持たない自然数A、Bと、これを足した数Cが登場する。A、B、Cを素因数分解(素数の掛け算に分解)し、出てきた素数を1回ずつ掛けた数Dとする。DとCを比較した場合、Cのほうが大きいことはほとんどないという。
例えばAが11、Bが25だった場合、Cは36になる。Aは素数なので素因数分解しても11、Bは5の2乗、Cは2の2乗掛ける3の2乗となる。2乗は「2回登場した」と考えるので、これらの素因数全てを1回ずつ掛けると(11×5×2×3)とDが計算できて、その値は330だ。これはCよりも大きい。
一方、Aが1、Bが8、Cが9のような場合はCの方が大きくなるが、こういうケースはそう多くはないというのがABC予想だ。
▽別の宇宙
当たり前のことを言っているようにも思えるが、証明するのは難しい。望月氏は、新たに構築した「宇宙際タイヒミューラー理論」に関する4編、約600ページに及ぶ論文で、結論の一つとしてABC予想が証明できるとした。「宇宙際」とは、国と国の関係を示す「国際」のように、異なる数学の宇宙の間の関係を扱う理論という意味。タイヒミューラーは扱う対象は違うが似たような考え方をしたドイツの数学者の名前から取った。
ABC予想は不等式で表される。不等号の片方が三つの数の足し算に関係した量、もう一方は同じ三つの数の掛け算にまつわる量だ。両者の大小関係について述べるために、足し算と掛け算の関係に立ち入らざるを得なくなっている。
足し算と掛け算の関係を明らかにすることは、両者が絡み合った既存の数学の枠組みだけでは難しく、望月氏の理論では、足し算と掛け算の関係を変形させたもう一つの枠組み、いわば“別の宇宙”を用意した。
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース